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第27回広島県理学療法士学会にて講師の中村雄一が発表させていただきました。
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Fascial Manipulationによる介入が効果的であった腰痛を主症状とする2症例の検討@第27回広島県理学療法士学会

こんにちは!
トリガースクールの中村です。

2023年12月16日,17日に行われた広島県理学療法士学会にて、「Fascial Manipulationによる介入が効果的であった腰痛を主症状とする2症例に検討」というテーマで発表させていただきました。

広島県広島市で行われた第27回広島県理学療法士学会の開催要項です

発表の一部をご紹介しますね!

はじめに

腰痛診療ガイドライン2019では
・慢性腰痛の自然経過は急性腰痛よりも不良
・非特異的腰痛の大部分の患者で自然回復するとはいえない

とされていますが、臨床上、筋膜に対する徒手療法後の疼痛緩和が認められることも多く、
Branchiniら(2015)によると、標準的理学療法単独よりFascial Manipulationを組み合わせることで慢性特異的腰痛の痛み・機能・QOLを優位に改善するとの報告もあります。

そこで今回は、慢性の腰痛症状に対してFascial Manipulationを実施し、症状軽減を認めた症例を経験したので報告させていただきます。

※発表は2症例でしたが、記事ではお一人のみ紹介させていただきます

症例紹介

・30歳代
・女性
・主訴:腰痛
・現病歴:23年前に発症し、その後寛解。しかし、5年前に再発。それから寛解と再燃を繰り返し、2023年2月に腰痛悪化のため離職
・診断名:腰椎椎間板ヘルニア(部位不明)
・誘発動作:夕方の立位での炊事作業で悪化
・随伴症状:なし
・既往歴:なし(※6年前に出産)
・運動習慣:なし

評価

初回介入前(2023年6月6日)時点の評価です。
評価および介入はイタリアFascial Manipulation協会が定める認定スペシャリストである理学療法士が実施しました。

まず、可動域、筋力、神経学的検査では特記すべき所見はありませんでした。

痛みはNumerical Rating Scale(NRS)で6/10でした。

生物心理社会的要因の関与を把握するためのSTarT Back Screening Tool(SBST)は、総合得点が5点、心理て社会的要因に関する領域得点が4点のため、予後はhigh risk群と判断しました。

心理的ストレス反応測定尺度(SRS18)は、抑うつ・不安が8点、不機嫌・怒りが9点で、どちらも「やや高い」に分類され、合計得点においてもストレス反応は「やや高い」という状態でした。

アテネ不眠尺度(AIS)は5点で、不眠症の疑いが少しある状態でした。

第27回広島県理学療法士学会で発表した症例の初期評価の項目です

介入部位

初回の介入部位は、両骨盤部と右大腿部の3ヶ所です。

2回目の介入部位は、左胸部、両骨盤部、右臀部、左大腿部の6ヶ所です。

第27回広島県理学療法士学会で発表した症例の介入部位です

結果

2回介入後(2023年7月日)の評価です。
初回と同様で、可動域、筋力、神経学的検査において特記すべき所見はありませんでした。

NRSは0〜3/10となっており、痛みの最大値が減少していました。
また炊事をしても痛くない時も出てきている様子でした。

SBSTは総合得点、領域得点ともに減少しており、low risk群となっていました。

SRS18はすべての項目で減点されていました。

AISは3点で、睡眠がとれている状態となっていました。

またご本人様より、コルセットを使用する頻度が週に5・6日あったのが、使用しなくても平気な状態になっていました。第27回広島県理学療法士学会で発表した症例に対してFascial Manipulationによる介入を2回実施した結果の解説です

考察

筋膜には侵害受容器が包埋されていて、組織の粘性増加が受容器の閾値を低下させ、さらにFascia由来の腰痛の要因にはヒアルロン酸の粘弾性増加と組織の線維化が影響しているとも考えられているため、今回のケースではFascial Manipulationによって組織の粘性が向上し、受容器の閾値が増加したことで痛みが減ったと推測しました。

また腰痛と関係が深いと考えられている胸腰筋膜は、広背筋や大臀筋と結合し、上腕や大腿の筋膜と連続性があることから、介入部位として症状のある部位から離れた部位による施術でも功を奏したのではないかとと推測しました。

さらに、我のカラダは、心理的ストレスによって交感神経活動が助長され、それよって副腎皮質ホルモンであるコルチゾール分泌は増加すると言われており、原因がはっきりしない原発性の不眠患者では夜間覚醒回数増加とコルチゾール濃度上昇に強い正の相関があるとの報告もあることから、今回、Fascial Manipulationによる介入で痛みが軽減したことで、心理的ストレス低下・交感神経活動低下・コルチゾール分泌低下などに影響したのではないかと考えています。

結語

以上のことから、Fascial Manipulationは慢性腰痛患者に対する治療の一助となる可能性が示唆されました。

 

今回は人生初のバーチャル学会ということで、操作などは少々緊張しましたが、大きな問題もなく無事に発表を終えて一安心でした。
広島県広島市で行われた第27回広島県理学療法士学会で、トリガースクールの中村雄一が初のバーチャル学会参加について解説しています

また、広島での活動やFascial Manipulationについて知っていただく貴重な機会を与えていただき、学会運営の先生方や発表に協力くださったすべての方に感謝いたします!

 

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